琥珀の叙事詩

Photo by Raphael Loquellano on Pexels 今宵も銀座の片隅で、静かにグラスを傾けるお客様方をお迎えしております。このカウンターで長年、ウイスキーの物語を紡いできましたが、一杯の琥珀色には、時に想像を絶するような職人たちの情熱と、繊細な技術が宿っているものです。 銀座の夜、グラスに宿る物語 「山崎」や「響」と聞いて、多くの方がその豊かな香りと奥深い味わいを思い浮かべることでしょう。日本の風土が育んだこれらのウイスキーは、今や世界中で愛され、その品質は揺るぎないものとなっています。しかし、この比類なき味わいが、いかにして守られ、磨き上げられているか、その背景にある物語をご存知でしょうか。 それは、まさに人の五感の極致とも言える、ある一人のブレンダーの存在によって支えられています。 「プールに1滴」――神業ブレンダー、輿石太氏の比類なき才能 サントリーが誇る「ブレンダー」という存在 ウイスキー造りにおいて、ブレンダーはまさにオーケストラの指揮者のような存在です。異なる蒸溜所の原酒、熟成期間、樽の種類、それぞれが持つ個性を見極め、最高のハーモニーを奏でる一本のウイスキーへと昇華させる。その役割は、熟練の知識と、何よりも研ぎ澄まされた感覚を要求されます。 サントリー のウイスキー造りの歴史は、ブレンダーたちの探求の歴史でもあります。彼らは、日本の気候風土が育む原酒の多様性を理解し、その可能性を最大限に引き出してきました。 感覚の極致、輿石太さんの「栄誉」 先日、そのサントリーのウイスキーの品質を支えるブレンダーに、素晴らしい「栄誉」があったというニュースを目にしました。それが、 輿石太さん という方です。 輿石さんの並外れた才能を示す表現として、「 プールに1滴 」の違いを判別できる、と報じられていました。これは、広大なプールにたった一滴、異なる液体が加えられただけでも、その変化を嗅ぎ分け、味わい分けられる、という驚くべき感覚の鋭さを表しています。 想像してみてください。無数の樽で熟成される多種多様な原酒の中から、その日のブレンドに最適なものを選び出し、微妙な配合で「山崎」や「響」といった、私たちが知るあの完...