グラスに宿る日本の心:サントリーブレンダー輿石太氏、「現代の名工」受賞に寄せて

グラスに宿る日本の心:サントリーブレンダー輿石太氏、「現代の名工」受賞に寄せて
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いらっしゃいませ。今宵も、ようこそいらっしゃいました。

このカウンターに並ぶボトルたちは、それぞれが独自の物語を秘めておりますが、中でも日本のウイスキーは、その繊細さと奥行きで、世界中の愛好家を魅了してやみません。

先日、大変喜ばしいニュースが飛び込んでまいりました。ジャパニーズウイスキーの金字塔ともいえる銘柄、「響」「山崎」の開発に携わった、サントリーブレンダー輿石太さんが、「現代の名工」に選ばれたという報せです。この吉報に、私どもウイスキーを愛する者としては、深い感慨を覚えずにはいられません。

「現代の名工」という栄誉の重み

「現代の名工」とは、その名の通り、日本の各分野において卓越した技能を持つ職人に贈られる、大変な栄誉でございます。正式には「卓越した技能者表彰」と称され、その道一筋に研鑽を重ねた者だけが手にすることができる、まさに「国の宝」ともいうべき称号。

今回の表彰では、大阪府から15人もの方々が選ばれましたが、その中に輿石さんの名があったことは、ウイスキー業界にとって大きな喜びであり、誇りでもあります。ブレンダーという仕事は、まさに五感を研ぎ澄ませ、数えきれないほどの原酒の中から最高の組み合わせを見つけ出す、究極の職人技の結晶と言えるでしょう。

「響」「山崎」に込められた、ブレンダーの哲学

輿石さんが手掛けられた「響」は、サントリー創業者の鳥井信治郎氏が目指した「日本人の感性に響くウイスキー」という理想を体現した一本。そして「山崎」は、日本初のモルトウイスキー蒸溜所である山崎蒸溜所の名を冠し、その地の風土と歴史が育んだ、日本のテロワールを感じさせる逸品です。

それぞれのウイスキーには、単なるアルコール飲料を超えた、日本の豊かな自然、職人の根気強い探求心、そして何よりも、飲む人への深い敬意が込められています。

輿石さんのようなブレンダーは、まさにウイスキーの魂を紡ぐアーティスト。熟成の進んだ原酒たちの個性を深く理解し、それらを調和させ、新たな生命を吹き込む。その過程には、長年の経験と、研ぎ澄まされた感性が不可欠です。一本のウイスキーがグラスに注がれるまでには、どれほどの時間と情熱が注ぎ込まれていることか。私どもは、その背景にある物語を心得ております。

一杯のウイスキーに想いを馳せる

今宵、皆さまがグラスを傾ける「響」「山崎」は、単なる美酒ではございません。そこには、輿石太さんのような偉大な職人たちの情熱と、日本のウイスキーの歴史が織りなす物語が、静かに息づいているのです。

ぜひ、その一杯を、五感で味わいながら、背景にある物語にも想いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、いつもの一杯が、より一層深く、心に響くものとなることでしょう。

またのお越しを、心よりお待ち申し上げております。

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