グラスの向こうに、日本の美意識を見る。サントリー「響」など187品目、来年4月の値上げが意味するもの

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Photo by Wendy Wei on Pexels ようこそ、いらっしゃいませ。今宵も、この銀座の片隅で、静かにグラスを傾けるひとときをご一緒できますこと、光栄に存じます。 さて、最近、お客様との会話の中で、ある話題が持ち上がることが多くなりました。それは、日本のウイスキーを愛する方々にとって、少々耳の痛いお知らせかもしれませんね。 一杯の「響」に宿る、日本の哲学 当店のバックバーに並ぶボトルの中でも、ひときわ目を引く存在の一つに、 サントリーの「響」 がございます。その名は、日本の豊かな自然、そして四季折々の美しい情景が織りなす「ハーモニー」から名付けられたと聞きます。 「響」の味わいは、まさに日本の職人たちが長年培ってきたブレンディングの妙技の結晶です。山崎、白州、知多といった、それぞれ個性豊かな蒸溜所で育まれた多種多様な原酒が、熟練のブレンダーの手によって、時に数十年もの時を経て、見事な調和を奏でるのです。その一杯には、穀物の恵み、樽の息吹、そして何よりも、時間を慈しむ日本の心が息づいています。グラスを傾ければ、華やかな香りが立ち上り、口に含めば、奥行きのある複雑な味わいが広がり、そして穏やかな余韻が長く続く。それは、まるで美しい絵巻物を見ているかのような体験を与えてくれます。 来年4月、ウイスキーの価格に訪れる変化 残念ながら、耳にされた方もいらっしゃるかもしれませんね。先日、 サントリー が、この「響」をはじめとする 187品目 について、 来年4月の出荷分から価格を改定すると発表いたしました 。 ウイスキーの価格は、単にボトル一本の値段を指すだけではありません。そこには、長い年月をかけて原酒を熟成させるコスト、職人たちの手間暇、そして何よりも、最高の品質を追求し続ける哲学が込められています。ウイスキーは、他の酒類とは異なり、製造から出荷までに膨大な時間と手間がかかります。特に長期熟成の原酒は、年々その希少性を増していくものです。今回の価格改定も、そうした背景の中で、品質を維持し、さらにその価値を高めていくための、一つの道筋であると私は捉えています。 もちろん、私たち愛飲家にとっては、少なからず影響があるでしょう...

琥珀色の余市に潜む、野生の鼓動 – クマ出没が問いかける、秋の森との向き合い方

琥珀色の余市に潜む、野生の鼓動 – クマ出没が問いかける、秋の森との向き合い方
Photo by Dương Nhân on Pexels

今宵も、グラスの中で氷が静かに音を立てていますね。このカウンターで長年、様々な物語を語り継いできましたが、今夜は少し、北の大地の息吹を感じさせる一杯と共に、あるお話をお聞かせしましょう。

さて、お手元のこの琥珀色の液体は、北海道余市町の風土が育んだ、まぎれもない逸品。北の厳しい自然、澄んだ空気、そして豊かな水が、このウイスキーに唯一無二の個性を与えています。グラスを傾ければ、潮風のニュアンス、りんごを思わせるフルーティーな香り、そして微かにピートのスモーキーさが感じられるでしょう。これらは全て、余市町の自然そのものが、グラスの中に閉じ込められた証なのです。

しかし、この豊かな自然には、時に我々の想像を超える一面もございます。先日、その余市町から、自然の厳しさを改めて思い起こさせるニュースが届きました。

余市町登町、秋の夕暮れに響く野生の気配

先日、10月21日の夕方北海道余市町登町クマが出没したというニュースがございました。自然が豊かな余市町において、野生の生き物との遭遇は、決して珍しいことではないのかもしれません。しかし、人間と自然が共存する上で、こうした出来事は私たちに、今一度、その境界線と向き合うことの大切さを教えてくれます。

余市町は、その恵まれた自然環境から、ウイスキーだけでなく、秋には甘く実る果物や海産物といった「秋の味覚」を求めて多くの人々が訪れる地でもあります。美しい紅葉に彩られた山々、そして豊かな実りをもたらす大地は、私たち人間だけでなく、野生の動物たちにとっても大切な生活の場なのです。

秋の味覚と共存の知恵 – 私たちができること

この時期、余市町で味覚狩りや自然散策を楽しみにされている方も多いことと存じます。しかし、野生のクマとの遭遇は、残念ながら避けられないリスクを伴います。私たち人間が自然の中で活動する際には、彼らのテリトリーに敬意を払い、細心の注意を払うことが何よりも肝要です。

たとえば、山に入る際には、鈴やラジオなどで音を出し、人間の存在を知らせること。生ごみは必ず持ち帰り、クマを誘引するようなものを放置しないこと。もし万が一、クマに出会ってしまった場合は、決して背を向けたり走ったりせず、落ち着いてゆっくりと後ずさりすることが大切です。専門家も、こうした自然の中での行動には細心の注意を払うよう促しております。

この土地が育むウイスキーの奥深さは、単に製法や職人の技だけでは語れません。そこには、余市町の厳しい冬、豊かな夏、そして時に野生の鼓動が響く森の息吹、その全てが凝縮されているのです。自然の厳しさを知り、その恵みに感謝する心。それこそが、この地で素晴らしいウイスキーが生まれる所以なのかもしれません。

今宵、この一杯が、皆様にとって、余市町の風土、そして自然との共存について静かに想いを馳せるきっかけとなれば幸いです。お気をつけて、北の大地の恵みと共にお過ごしください。

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